Diary
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 ※:真壁達也の日記より

5月8日(月:晴れ)
 学校でいじめられた。…いったい何度その言葉を、この日記に書いたのだろう。小学校5年生のころからだから、もうまるまる3年はこの日記を書いていることになる。要するに、まるまる3年間いじめられ通しだということだ。
 何年間この日記を書くのか、自分でも判らないが、先の見えないトンネルの中をいつまでも走りつづけのかと思うと、発狂しそうになる。もう死んでしまいたい。
 でも死ねない。死ぬのは怖い。生きているのも怖いけど、死ぬのはいやだ。
 うんざりする。
 今日のいじめは、背中に『犯してください』と書いた紙を、知らない間に貼られていたことと、地理の教科書と地図帳を隠されたことと、上履きを便器の中に放り込まれたことだった。紙を貼ったのは同じクラスの相田に違いない、教科書を隠したのは田島だろう、上履きは三津池にやられた。比較的穏やかな一日だった。
 帰って来てからすぐ、テディを散歩させに行く。散歩の途中、ゲームショップの前を通った時、『ウィザーズハーモニー2』が980円で売られていたのを見る。いくら数年前のゲームだといっても、あんな面白いゲームがあんな値段で売られているのは理不尽だ。理解に苦しむ。
 夕飯は、鶏のから揚げと、フレッシュサラダ、コンソメスープ。父さんが出張から戻ってきたから、母さんがパートを休んだらしい。少し豪華な食事だった。

5月9日(火:晴れ)
 学校でいじめられた。僕の日記はそればかりだ。要するに、僕の人生がそればかりだ、と言うことだ。限られた人生の何割かが、いじめられる日々に費やされている。だいたい人の一生なんてひどく短い。毎日欠かさず日記を書き続けたとして、その分量はこのパソコンのハードディスクの中にまるまる収まってしまう程度のものでしかないのだ。そんな貴重な時間を、こんな日々に費やしている。
 今日のいじめは、女子トイレの個室に押し込まれて、ホースで上から水をかけられたことと、自転車のタイヤに画鋲を6個も刺されたことだった。4500円かけて自転車屋さんで直してもらった。タイヤが使いものにならなくなっていたので、丸ごとタイヤを取り替えたのだ。トイレに押し込んだのは徳田と住谷と加納、画鋲は誰だか判らないが、こういうことをするのは、おそらく溝口だろうと思う。彼らはこんなことをして、いったいどういう快楽を得ているのだろうか。人をいじめるというのは、そんなに楽しいものなのだろうか。僕が今より強くなって、逆にあいつらをいじめたら、やはり面白いのだろうか。面白いような気がする。でも僕はスポーツができないから、あいつらをいじめることは、一生できないと思う。悔しい。一度で良いから、あいつらをいじめてやりたい。
 テディを散歩させて帰った後、ブックオフで買ってきた『銀河お嬢様伝説ユナ 哀しみのセイレーン』の小説を読んだ。ユナの描写がとても可愛くて、思わず最後まで一気読みしてしまった。
 夕飯の時、母さんに来年からの進路のことを聞かれた。まだ考えてなかったのでそう言ったら、来年は受験なんだから早く決めなさい、と言われた。

5月9日(水:曇り)
 学校でいじめられた。もし僕がインターネットでホームページを作ったら、タイトルは『学校でいじめられた』にしようと思う。インパクトがあるタイトルだから、見てくれる人もいるだろう。でも、ホームページを作るソフトを持っていないから、結局それもかなわぬ夢。
 今日のいじめは、給食のシチューの中にゴキブリの死体を入れられたことと、体操服をびりびりに破られたことと、ノートに死ねとか消えろとか逝ってよしとか臭いとか吐き気がするとか、いろいろ落書きをされたことだった。ゴキブリを入れたのは相田、体操服は木野、ノートの落書きはクラスの半分近くの人数があった。ノートはともかく、体操服は困った。親に話すわけにもいかないから、駅前で新しい体操服をこっそり買ってきた。
 テディを散歩させていた時、公園でまなみちゃんに会った。ミールを散歩させていたので、2匹をしばらく遊ばせておいて、15分ほど話した。僕と気軽に話してくれるのはいつも、この5つも年下のまなみちゃんだけだ。まなみちゃんは最近、プレイステーションの、マジカルドロップにハマっているらしい。ずいぶん前のゲームだが、安売りしていたのを買ってきて、そのままハマったのだそうだ。今度対戦しようという話になったので、今のうちに腕を磨きなおしておこう。

5月10日(木:晴れ)
 学校でいじめられた。数えてみたら、この書き出しが今日で200回になった。ワンパターンだと思うが今さら変える気にならない。5963回になったら少しは笑えるかもしれない。…そんなバカな話はないだろうが。でも596回なら現実的な話だ。多分達成するだろう。
 今日は、鉛筆を指の間にすばやく突き立てるあの遊びをさせられた。自分でやったんじゃない、木野と徳田と加納が僕の手を使ってやったんだ。しかも、芯の方を下にして。コンパスじゃなかっただけましかもしれない。でも、何ヵ所も何ヵ所も何ヵ所も芯が刺さって怪我をした。指が痛い。すごく痛い。血が出て、机が赤くなってもやめてくれなかった。すごく痛い。だから今日はもう何も書かない。

5月11日(金:曇り)
 学校でいじめられた。まだ指が痛い。朝、母さんに指の怪我のことを聞かれた。近所の犬にちょっかいを出して噛まれたと言い訳しておいたが、信じてくれただろうか。
 家庭科の授業で、調理実習だった。火であぶった包丁を首にあてられた。首の後ろがわを火傷した。やったのは加納だ。悲鳴をあげたら家庭科の先生が飛んできたが、その場はうまくごまかしておいた。なぜごまかすのだろう、その場ではっきり「加納にやられました」と言えばいいのに。でもそんなことをしたら、きっともっとひどいことをされるのだろう。そもそも、先生が信じてくれるかどうかあやしい。でも火傷の痕があるから信じてくれるかもしれない。氷もなかったし、水で冷やすのもできなかったから悪化した。さっき水ぶくれになってたのを指でさわっていたら、皮膚が破れて中の水が背中に流れてきて、とても気持ち悪かった。昨日に引き続き、身体に傷がつくいじめだった。とても痛い。
 帰ってきてからテディを散歩させた。テディは僕に尻尾を振ってくれる。手を差し出すと前足を載せてくれる。命令すればおあずけもできる。僕が全部しつけた。お手と、おあずけと、チンチンと、ぐるぐるができる。僕が命令するとやってくれる。まなみちゃんに会った。僕の指のばんそうこうを気にしていた。痛そうだね、かわいそうだねと言ってくれた。まなみちゃんだけが言ってくれる。まなみちゃんはとても可愛い。お手はしてくれないけど。でも言えばしてくれるかもしれない。嫌われるかもしれないから言えない。やってくれたら面白いと思う。いつか頼んでみよう。

5月12日(土:晴れ)
 今日は学校が休みだったので、マジカルドロップを引っ張り出してきて特訓した。以前は腕に自信があったが、ここしばらくやってないから、練習しておかないとまなみちゃんに負けるかもしれない。負けるのは嫌だ。いくらなんでも、小学生の女の子にまで、テレビゲームで負けたくない。練習していたら、かなり腕が落ちていることに驚いた。連鎖を発動させることがぜんぜん出来なくなっている。何時間かやっていたら、ようやく5連鎖くらいまでできるようになったが、前に比べると全然だ。前は6連鎖くらいはあたりまえにできたのに。
 夕方ごろテレビを見ていたら、「しゃべり場」というダサいタイトルの番組がNHKでやっていた。13〜18歳くらいの中学生高校生が何人か出ていて、出されるお題をみんなで議論しあう、と言う内容だった。これを見ている人は、「これが最近の10代の考えなのか」と思うのだろうか。お笑いだ。あんなのは、一部の恵まれたやつらが、ああだこうだと馬鹿馬鹿しい話を小理屈をこねて、さも得意そうにわめき散らしているだけだ。きっとみんな、いじめられたこともなければ、真剣になにかをやったこともないんだろう。いじめたことくらいはあるかもしれない。
 夕飯はチャーハンだった。明日は買い物に行くとか言ってたから、もっと豪華な物が食べられるかもしれない。

5月13日(日:晴れ)
 電車で名古屋まで行って、アニメイト名古屋に行ってきた。デ・ジ・キャラットのコスチュームが売っていたので欲しかったが、お金が無いので買えなかった。まなみちゃんに着せたら似合うだろうに。その代わり、マウスパッドとピンバッジを買った。さっそくデイパックに付ける。金色に輝いて、とても可愛い。ロッテリアで海老バーガーのセットを食べた後、生活倉庫の6階を冷やかしていたら、死体写真を集めた本がおいてあった。むちゃくちゃ気持ち悪い。誰が買うんだあんなもん。と言うか、誰だよあんな本書いたの。頭がおかしいんじゃないか。
 帰ってきたあと、日曜日なのでインターネットをやった。行きつけの掲示板をいくつか散歩した後、カードキャプターさくらの、キャラクターチャットをやる。まだ夕方だったのに、今日はルームに7人ほどいて賑やかだった。日曜日だからだろうか。ルームにいた人で、サムソンさんと言う人がいたが、この人はとても良い人。僕の話をよく聞いてくれる。僕は静かに話を聞いてくれる人がとても好きだ。あんな人が私生活で友達だったら良かったのに。また話したい。メールアドレスを教えておいたから、今度メールをくれるだろう。向こうのアドレスは、その時送られてきたものをメモしておいてくれと言われている。
 良い気分のままテディを散歩に連れて行く。今日は少し遠くまで散歩に行こうとしたのだが、テディが嫌がって結局もとの道まで逆戻りするはめになった。いつものコースじゃないと嫌らしい。テディはわがままだ。しつけ直さないといけないかもしれない。まなみちゃんには会えなかった。
 明日は月曜日だ。学校に行かなければいけない。なぜ行かなくてはいけないのだろう? きっとなにかの罰なんだろうな。

5月14日(月:曇り)
 学校でいじめられた。いじめられる側にも問題がある、と誰かが言っていた。じゃあどうすればいいんだろう、教えてくれ。教えてくれたらすぐに実行する。問題がある、なんて言ったきりで、具体的にはどうすればいいのか、なんで教えてくれないんだ。そんなの無責任じゃないか。なにも言ってないのと同じじゃないか。じゃあ初めから黙っててくれよ。変な期待をもたせるなよ。「いじめはいかんぞ」なんて言って、実際になにもしない先生と同じだ。いやがる振りして、けっきょく僕をいじめるあいつらと同じだ。遠巻きに囲んで、こわごわしながら楽しんで見つめてる女どもと一緒だ。なんで何もしてくれないんだ。助けてくれたっていいじゃないか。助けてくれよ、なんでもするよ、CD盗んで来いって言ったら盗んでくるよ、宿題代わりにやれって言うならやるよ、靴なめろって言ったらなめるよ、4つんばいで学校だって通ってやるよ、だから助けてくれよ。頼むよ頼むよ頼むよ頼むよ頼むよ頼むよ頼むよ頼むよ頼むよ頼むよ頼むよ頼むよ頼むよ頼むよ。

5月15日(火:曇り)
 学校をさぼった。家を出たあと、学校に行かないで、名古屋まで遊びに行った。先生には携帯電話で、風邪ぎみだから、と連絡しておいた。信じてくれただろうか。信じなかったかもしれない。広田は僕がいじめられていることを知っている。いじめを苦にして学校をさぼったって見当がついたに違いない。でもきっと何もしない。何もしない。親にだって連絡なんかしないだろう。いじめが、PTAで騒がれ出したら、きっとあいつらが先生に何かするだろうから。殺すかもしれない。それより先に僕が殺されるのか。だから学校には行かない。行ったら死ぬ。学校に行ったら死ぬ。だから行かない。だから僕は悪くない。これは正当防衛だ。そのくらいの権利はある。死ぬのは嫌だ。死ぬくらいなら先に僕が殺す。そんなことできるわけないじゃないか! 僕があいつらを殺すなんてできるわけないじゃないか、ころされる、僕はころされる。だから行かない、行かない、学校になんか絶対行かない。
 ゆうべ金庫から取ってきた1万円で、コムテックで遊んだ。でも、マジカルドロップをやろうと思ったのに、もう筐体がなかった。なんで撤去しちまうんだよ。せっかく、まなみちゃんが一緒に遊んでくれるのに。せっかく練習しようと思ったのに、当てが外れたじゃないかよ。くそったれ。
 3000円くらい遊んだあと、マックで食べて、そこらじゅう歩きまわった。久屋大通りあたりの、裏路地の細い通りに、ミリタリーショップがあった。そこでナイフを買った。バタフライナイフとかいうやつが欲しかったが、売ってくれなかったので、普通の、小さいナイフしか買えなかった。刃があまり大きくないから、頼りない。バタフライナイフとかサバイバルナイフなら重そうで、がっしりしてて強そうなのに。でも、サバイバルナイフだと大きすぎて きっとすぐに見つかって取り上げられてしまう。このナイフなら裏ポケットに隠しておけるし、バタフライナイフだと使うのが難しいからちょうどいいのかも知れない。でも、こんな小さいのじゃ、カッターと同じじゃないか。全然威力なんかありゃしないよ。お守りにだってなりゃしないじゃないか。もっと良いものを買えば良かった。後悔だ。
 夕方くらいに帰って、テディの散歩に出かけた。ひょっとしたら、どこかで待ち伏せされているかもしれないと思っていたが、特にそういうのはなかった。その代わり、まなみちゃんがいた。僕を見てびっくりしたみたいだった。こんな顔じゃびっくりされても仕方ない。でも、まなみちゃんは泣き出してしまった。痛い?痛い?と言いながら、僕の顔に必死にハンカチをあててくれた。昨日の怪我だから、今さらハンカチなんかあてたってしょうがないのに、何度も何度もハンカチでなでてくれた。どうしてまなみちゃんはこんなに優しいんだろう。同級生のやつらなんか、僕が泣いても叫んでも頼んでも、何もしてくれないのに。ただ笑ってこっちを見てるだけなのに。まなみちゃんは泣きながら僕の顔にハンカチをあててくれる。嬉しくて、僕は泣いてしまった。でもまなみちゃんは、僕が痛くて泣いたんだと勘違いして、今度はごめんね、ごめんねと言いながらまた泣き出した。まなみちゃんごめんなさい。僕が泣かしたんだ。僕が悪いんだ。どうしてこんなに優しくて可愛い女の子がいるんだろう。僕はこんな女の子を他に知らない。天使ってきっと、まなみちゃんみたいな女の子のことなんだろうな。

5月16日(水:雨)
 今日も学校をさぼった。あまり長いこと休んでいると、さすがに先生が家に来るかもしれない。でもまだ行きたくなかった。できればずっと行きたくない。とりあえず先生には、まだ体調が悪いからと伝えておいたが、信じてないようだった。いつまでさぼれるだろう。
 今日は何もしないで寝ていた。共働きだから、家には誰もいない。親に仮病を使う必要もない。ひどくだるい。何もする気が起きなかった。マジカルドロップもやらなかった。散歩にも行かなかった。まなみちゃんは何をしてるかな。

5月17日(木:曇り)
 本当は学校に行きたくなかったけど、あまり休むと、家にまであいつらが来そうで怖かったから学校に行った。だからいじめられた。
 おまえ逃げやがったな、とか、クズ、とか言われて、トイレで殴られた。顔は殴られなかったけど、お腹とか足をやられた。苦しくて吐いた。吐いたら、ゲロ野郎ゲロ野郎と言われてまた殴られた。そのまま放課が終わって、美術の時間になったが、苦しくて起き上がれなかったから、そのままトイレでうずくまっていた。
 帰ってきてから、テディの散歩に行った。まなみちゃんには会えなかった。

5月18日(金:晴れ)
 学校をさぼった。仮病を使った。また名古屋に遊びに行った。そうして帰ってきたら、先生が家から出てくるところだった。パートに行っているはずの母さんも家にいた。学校から連絡があったのに違いない。そのあと、親に問い詰められた。いじめられてるのか、なんで言わなかったんだ、金庫からお金も持ち出したな、先生に相談しなかったのか。何時間も僕は親に問い詰められた。母さんは泣いていた。でも泣きたいのは本当は僕の方だ。なんで僕がいじめられなくちゃいけないのか、知りたいのは僕の方だ。相談なんかできるわけないじゃないか。チクったら、それをネタにいじめられるんだ。殺されるかもしれないんだ。相談なんかできるわけないじゃないか。僕は必死に、いじめられてなんかいない、と言い張った。学校がつまらないだけだって言い張った。ずっとそう言っていたら、なんとか信じてくれたみたいだった。でも、明日からまた、ちゃんと学校に行くことを約束させられた。

5月19日(土:晴れ)
 疲れた。

5月20日(日:晴れ)
 あした学校に行かなきゃいけない。それがいやだ。行きたくない。でももうさぼることもできない。さぼったら親に怒られる。先生が家に来る。だから行かなきゃいけない。
 もう死にたい。

5月21日(月:曇り)
 学校でいじめられた。もういやだ、死にたい。僕は人間じゃない。みんなに人間だなんて思われてない。6時間目がおわって、ショートタイムが終わって先生が職員質に帰ったあと、他のクラスの先生もみんな帰るまで待たされたあと、服を脱がされた。みんなに押さえつけられて、女子も見てたのに、パンツも脱がされて僕はすっぱだかになった。手と足を両側から引っ張られて、かえるの解剖だとか言われて、美術の筆で、絵の具を塗りたくられた。他のクラスのやつらも来て、みんなで僕を塗りたくった。男子だけじゃない、女子のやつらもげらげら笑いながら、僕に絵の具を塗った。気持ち悪いとか、やだとか言いながら塗る。みんなが僕の裸を見る。裏返されて、おしりの穴もみんな絵の具で塗られる。ちんちんも、小さいとか立ってるとかなんとか罵って、みんなでつかんだり引っ張ったりされた。声を上げて先生を呼びたかったけど、口をパンツでふさがれて、声を出せなかった。そのまま、体中がぬるぬるになるまでやめてくれなかった。そのあと、トイレに連れていかれた。そこで、あいつらは小便をそこら中にした。それで、僕になめろって言った。なめて掃除しろって言った。なめろって、言った、いやだった、なめたくない。そんなことできないって言ったらまた殴られた。はだかで、絵の具塗られたまま殴られて吐いた、吐いたらまた、ゲロ野郎って蹴られて、泣いたら泣きむしって言われて、なめろttれいわれて、やだやDふぁって、それっでも言いつづけたら、顔を便器につこまれて、むりやり押さえつけられて、くさくてまた吐いた、。まrた蹴られて、痛くて痛くて、たすkて欲しくて、もういやで、僕は、便器をなめ、しにたい、にt¥あいつぃにたいしHにたい、しにrたい死にたい死にたい死にたい死にたいしにらいしんたいしにたいしにたい。やだ、死にたくない、あいつらが死ねばいいんだ。あいつらがみんなしんじまえば、僕は助かるんだ。だから死ね、僕のために死ね。しねぃね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね誌円し円し円死ね死ね死ね胃sね意思ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね胃sネイsネイs寝死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねい死ね死ね意思お寝死ね胃死ね死ね死ね死ねいsね死ね死ね死ね死ね死ねいsね死ねいsね意思エス稲死ねいsね死ね死ね死ねいsね死ね死ねいsねいsねzxしえんしえんしえんしねしねしねしねしsねしねしねしねしsdんしsねしんせいえんしえんしねしねしねsねしねしねしねいsんうぇいsねいsねいsねいえsdにえsdじゃしj:q3eaioasdhしねしいkねぢしねしねいsねいsねsぢksにえんしえんしえにせいえしえんしえんしねしんせいんしねしねしねいsねいしねしんすいえしねしねしねいsねしねzxしねしんしえんししね

5月22日(火:曇り)
 前に買ったナイフを手首にあてたけど、ひけなかった。いたいのはもういやだった。それで楽になれても、痛いのはいやだ。まなみちゃんに会えなくなるのもいやだ。
 それより今日、インターネットですごいサイトを見つけた。メールのチェックをしたら、サムソンさんからメールが届いていて、その中に殺人の方法を詳しく解説したサイトのURLが書いてあったんだ。僕の悩みを打ち明けたわけじゃないけど、サムソンさんはいい人だから、気付いてくれたのかもしれない。それともサムソンさんの趣味かな。とにかくすごい発見だ。トップページの、あの宣言が僕の心を打った。『死ぬより殺せ』。そうだよ、僕が死ぬ必要なんかないんだ、あいつらを殺せば楽になるんだ。僕が死ななくてもいい。あいつらが死ねばいいんだ。なんとか殺したい。でも、普通にナイフを持って向かって行っても、返り討ちにあう気がする。多分そうなるだろう。やるとすると後ろからしかない。でも、1人や2人殺してもしょうがない。やるなら全員殺さないと意味がない。でもいくらなんでもそんなこと無理だ。だから、いちばん威張っている奴を殺す。サイトにもそう書いてある。大勢が相手の場合、リーダー格を殺せばいいんだそうだ。そうすると、他の雑魚はもうどうにでもなるらしい。きっとそうだ。リーダーを殺してしまえば、あとのやつらは怖がってもういじめなくなるんだ。いちばん率先してやってるのは、徳田と加納の2人だ。この2人を殺しさえすれば何とかなると思う。やりかたは、2人が帰って行くところを待ち伏せして、通り過ぎて行ったら後ろからまず加納を刺す。加納は、なにか拳法の道場に通っているそうだから、先に殺しておかないと後でやられる。徳田は太っているし、動きも鈍そうだから、加納を先に刺して、徳田がひるんだところで首にナイフを刺せばいい。でも、どこでそんなことをやればいいんだろう。あした、あいつらの帰り道をつけてみよう、どこか人目のつかないところを通るかもしれない。帰る方向は同じみたいだし。それより、刺したら返り血が飛びそうだ。サムソンさんが教えてくれたサイトで、返り血はものすごい量で、すぐに服が血でびしょびしょになってしまうくらいすごいんだと書いてあった。どうしよう。そうだ、誰かの体操服を盗んでくればいい。持って帰るやつがほとんどだけど、教室に置いて行くやつも何人かいる。それを着ていればいい。刺して、返り血で服が濡れたら、見つからないようにどこかで着替えて、服はゴミ捨て場にでも捨てておけばいい。これなら、見つかってもそいつのせいになるはずだ。でも、あいつらを殺す動機があるのは、僕だけに違いない。そうなると疑われるのは僕だ。ただ殺しただけじゃ逮捕されてしまう。なにかいい手は無いだろうか。サイトを見ると、自分が疑われないためには、誰かに容疑の矛先を向ける必要がある、と書いてある。なんでも、日本の警察は自白をまだ重要視してるらしいから、偽の自白テープを作れば、かなり有効な武器になるらしい。でもいったい、そんなもの誰に作らせればいいんだ…?

5月23日(水:曇り)
 見つけた。人目のつかないところ。あいつらの帰り道に、林に囲まれた墓場がある。その前を通るみたいだが、ここは今日見た限りでは全然人がいない。墓場はひょっとすると誰かがいるかもしれないが、向かいの林の中には誰もいないだろう。ここで着替えたり、待ち伏せたりできるはずだ。
 そうそう、容疑の矛先を他のやつに向ける件だがうってつけのやつを見つけた。となりのクラスの水沢だ。あいつなら、女子の中でも特に弱々しいし、脅したら、偽の自白テープが作れると思う。ナイフで脅かして「私が殺しました」とでも言わせて、そのあと水沢も自殺に見せかけて殺して、それであいつらを殺せば、水沢が犯人だと思われるだろう。いや、ダメだ、これじゃあ水沢の方が先に死んでるから、水沢にはやつらが殺せない。死亡時刻でわかってしまう。先に徳田と加納を殺して、そのあと水沢を殺さないといけない。どうすればそういう状況を作れるだろう。そうだ、手紙を作ればいい。手紙で、いついつの時間に、教室で待っててくださいとか。教室じゃダメだ、どこがいいだろう。そうだ、近くに車のスクラップ置き場がある。あそこなら誰もいないだろうし、いろんなガラクタが高く積み上げられてるから視界も悪いだろう。でも、そんな怪しげなところに来るだろうか。そうだ、水沢は城之崎のことが好きだって聞いたことがあるから、城之崎の名前で手紙を出せば、あそこにも来るだろう。これでいい。
 整理すると、まず誰かの体操服を盗んでおいて、水沢の靴箱に手紙を突っ込む。そうしたら自転車で墓場まで行き、体操服に着替えて徳田と加納を待ち伏せする。人がいたら林の中に隠れる。2人が来てもまだ人がいれば諦めればいい。そうして殺したら、着替えて、自転車でスクラップ置き場まで行き、水沢を脅してテープレコーダに自白を入れさせて、殺せばいい。殺し方は、あいつの手にナイフを握らせて、そのまま首に突き立てればいいだけだ。背中側からはがいじめにしておけば、返り血も浴びないだろう。体操服は、そのままスクラップ置き場に捨てて置けばいい。
 これでいいんだ。これで僕は救われるんだ。水沢には悪いけど、僕が味わった苦痛に比べれば、一瞬で死ねるんだから楽だ。それにあいつだって、こないだ僕のからだに絵の具を塗ったんだ、恐る恐るだったけど、楽しそうに塗りやがったんだ。死んで当然だ。
 決行は明日だ。テープレコーダは体育館の放送室から盗もう、あそこには鍵がかかっていない。明日は僕の記念すべき日になる。僕が救われる日なんだ。もうこれで、僕はいじめられなくなる。いやなやつらが2人死んで、誰も僕に手を出さなくなる。これでいい。ようやく平和が手に入るんだ。自由が手に入るんだ。この手でつかみ取る。神よ、見ていてください。僕はやります。悪いやつらを地獄に送ります。悪魔に魂を売るんじゃありません。悪魔に悪いやつらを引き渡すだけなんです。神よ、僕はやります。

5月24日(木:雨)
 人を殺すのが、こんなに簡単だとは思わなかった。
 僕は今日、人殺しになりました。あいつらを殺しました。うまく行きました。これで自由になったんです。神よ、見ていてくださいましたか。僕はとうとうやったんです。2人ともあっけなく死んでくれました。雨だったので、お墓に人がいなかったこともあって、とても簡単でした。
 水沢だけには少し、てこずりました。スクラップ置き場に僕が現れたら、あいつはすぐに大声を上げて逃げ出しました。でも、あいつは運動音痴だから、すぐに捕まえることができました。ナイフで脅したら、あっけなく僕が言った台詞をテープに吹き込みました。
 でも、殺す時はかなり厄介でした。黙って死んでくれないんです。あいつは僕をいじめたのに、自分は死にたくないって言うんです。神よ、あんな女は死んで当然ですよね。
 しばらくもみあううちに、あいつの腕にナイフが刺さりました。すごい悲鳴をあげて、あいつはその場でのた打ち回りました。水沢のスカートがめくれて、下着が見えました。でも水沢は、全然隠そうとしませんでした。痛い、痛いと言って涙を流すだけでした。でも、僕が近づいてナイフを振り上げると、足を使って僕を近づけさせません。しょうがないので、僕は足を刺しました。ふともものあたりにナイフを突きたてました。両足を刺したら、もう力が入らなくなったみたいで、もがくだけになりました。これでゆっくり殺せる、と思ったけど、なんだか変な気分になって、僕は水沢の服を破って犯しました。こんなこと書かなくても、神さまなら見ていましたね。すごく気持ちよかったです。雨が降っていたことも、忘れてしまったほどです。あんなに気持ちいいことがあるなんて、僕は知りませんでした。終わった後、放心している水沢の背中から手を回して、首にナイフを突きたてました。でも手や足に傷があるし、自殺に見せかけることはできませんでした。でも近くにあった枯れ井戸に放り込んで、上からものを落としたら、見えなくなりました。これで見つからないと思います。テープは作ったので、あした水沢の机に放り込んでおこうと思います。
 帰り道、まなみちゃんに会いました。まなみちゃんは、僕の顔をみて「怖い」と言いました。どういう顔をしていたのか自分ではわかりませんが、まなみちゃんを怖がらせるくらいだから、すごかったんでしょう。
 まなみちゃんは可愛いです。とても可愛いです。神よ、まなみちゃんのことはあなたも知っていますね。すごく可愛いでしょう。あなたが作ったんですか。あんなに可愛い子は他にいません。天使のようです、僕の女神さまです。同じ女でも、水沢なんかよりずっとずっと魅力的です。でも、水沢を犯した時、すごく気持ちよかった。あれだけは、水沢も捨てたもんじゃないと思いました。でも、水沢でああなんですから、まなみちゃんを犯したら、きっともっとすごいでしょう。どんなに気持ちいいか想像がつきません。まなみちゃんを犯してみたいです。きっとまなみちゃんは嫌がらないと思います。まなみちゃんは、僕とお話している時、一度もいやそうにした事がありません。きっとまなみちゃんは、僕のことが好きなんだと思います。神よ、間違っていませんよね。まなみちゃんは僕のことが好きなんですよね。そうに違いありません。だから僕はまなみちゃんを犯そうと思います。今度の日曜日、まなみちゃんの家でマジカルドロップをやるんです。約束しました。今からとても楽しみです。
 神さま、僕は幸せです。今日うまくいったこと、感謝しています。
 ありがとうございました。


    ※


「まなみ、ごはんよ」
 1階から聞こえてくる母親の声に、麻倉まなみはパソコンのディスプレイから顔を上げた。画面には、近所に住んでいる中学生の男…真壁達也の部屋から盗んできたデータが映し出されていた。それは彼が綴った日記だった。
 まなみは、自分がその男に好かれていることを知っていた。そして、それがたとえようも無く不快だった。
 あの、生白い首筋がのぞくたびに、卑屈な笑みを浮かべた瞳に見つめられるたびに、吐き気をもよおした。まなみは、達也が大嫌いだった。死んでもらいたかった。破滅して欲しかった。
 だが、まなみはまだ小学生だった。いくらなんでも、中学生の男に腕力で立ち向かえるはずはない。親に告げ口しようにも、そのことがばれたら、いったいどういう手段に出られるか判ったものではない。
 だからまなみは、達也が自滅する方法を取った。
 学校で彼がいじめられていることは、ずいぶん前から知っていた。そのことを利用できないかと考えたあげく思いついたのが、彼に殺人を促そうというものだった。日を追うごとにやつれていく達也の様子をみる限り、きっかけさえあれば一線を踏み越えることは目に見えていたから。
 まず、まなみは達也の家に忍びこむことからはじめた。真壁の家は共働きで、いちばん早く帰ってくる達也でさえも、いつもどこかに寄り道しているから、夕方5時30分ごろにならなければ帰ってこないし、庭先にいる番犬も、犬の散歩の途中で達也と会ううちに馴れていたから、吠えられることはない。忍びこむのに障害となるものがないのだ。ポストの裏に貼り付けてあった合鍵で忍びこみ、達也の部屋を漁っているうちに見つけたのが、あの日記だった。その中から、インターネットをやっていることを知り、これ幸いとメールアドレスをメモしてきた。
 この時、すでにまなみの頭には、計画の全貌が浮かんでいたのである。
 まなみは自分の家のパソコンからインターネットに接続し、殺人の方法や、殺人を促すような危険なサイトを検索すると、URLをメモして、もう1度真壁の家に忍びこんだ。そして、達也の部屋のパソコンからインターネットに接続し、その場でホットメールに加入し、あらかじめ用意して来た文章を打ち込んで、そのまま彼が普段使っているメールアドレスに送った。あたかも、達也の知り合いの、サムソンとかいうやつが出したように装って。あとは、サイト閲覧の履歴などを削除して、まなみが侵入した痕跡を消すだけ。メールを出したのがまなみであることなど、どこからも知ることができない構造が出来上がったわけである。
 だが、それ以上まなみがなにかをしたわけではない。まなみがやったことと言えば、メールを出したこと、ただ1つだけだ。
 言い方を変えれば、それだけで良かったとも言える。
 直接『殺せ』と言う必要もなければ、破滅を促す決定的な切りふだを出す必要もない。大切なのは「きっかけを与えること」ただそれだけだ。達也の心は、言うなればピンと張ったゴムのようなもの。ハサミで断ち切る必要は無い、爪で少し引っかいてやるだけで、いともたやすく切れるのだから。
 案の定、彼はすぐにエサに飛びついた。ものの数日もしないうちに、中学生の刺殺死体が発見されるに至る。
 事件と共に失踪した女子中学生も、スクラップ置き場に向かうところを見たと言う証言によって、すぐに枯れ井戸の中から発見された。他殺死体であることは明白で、服にいくつも残っていた指紋や、体内に残されていた精液、取っ組み合いになった時に女子生徒の爪の間に残された皮膚などの残留物、そして生徒たちの『いじめられていた』という証言がきっかけとなり、真壁達也はあっけなく逮捕されたのである。容疑は殺人罪。いじめられていることは学校側が否定したものの、生徒たちの証言の方が重要視された。もっとも、正当防衛が適用される見込みはゼロであるが。ちなみに、この事件によって校長ら数人が辞職を余儀なくされることになる。


 いつしか――まなみの頬に、笑みが広がっていた。

  ――なんてあっけないんだろう、人間とは。

 母親の声が1階から聞こえる。寝てるの?と叫んでいるようだ。

  ――小学生の、ほんの少しの関与だけで、人間が狂っていく、壊れていく。

 まなみは自分が、頭の良い娘であることを知っていた。

   ――人を壊すのが、こんなに簡単だとは思わなかった。

 親の前で、友人の前で、自分に恋する男の前で、自分を偽る術を、すでに身につけていた。

  ――馬鹿な男。きっと今でも、私のことを純粋で、子供らしくて、ただ可愛いだけの女の子だと思っているんだ。


 ――ふいに物音がして、まなみの思考が現実に引き戻された。
「まなみ、ごはんだって言っているでしょう」
 母親がドアを開けてこっちをにらんでいる。
「いつまでパソコンやってるの、禁止にしますよ」
「ごめんママ、今行くから」そう言って、ドキュメントを閉じ、ウィンドウズを終了させる。
「またインターネットしてたの?」
「違うよママ、日記なの」
「日記?」
「そうよ、今日から日記をつけることにしたの。学校行ってる間とかに、見たりなんかしたらダメだからね」
「判ってるわよ。そんなに心配なら、パスワードつけときなさい。それより、早く降りてらっしゃい。今日はあなたの好きな、クリームコロッケだから」
「やったぁ!」

 満面に笑みを浮かべて、まなみは母親のあとについて行った。

 次は誰を狂わせてやろうか――そんな思いを、笑顔の下に隠して。

 
 ――――――――――終わり

 (初出:2000年11月6日)

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