まーちゃんとぼく
★もう戻らない光景★
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 まーちゃんはとてもふしぎな子でした。クラスのみんなとおおぜいで遊んでいる時、にぎやかなのにときどきさみしそうな顔をしたり、そうかと思うと、ひとりで本を読んでいる時に楽しそうに笑ったり、ぼくと遊んでいる時、ふたりきりなのにおおぜいで遊んでいるみたいにはしゃいだりしました。そして、学校から帰る時、きまってぼくといっしょに帰り、ポストのところまでくると、バイバイと言ってぎゃくもどりしていきました。

 ある日、まーちゃんとこうていのブランコで遊んでいる時、まーちゃんはぼくに、いちばんすきなお日さまの色はなに?と聞きました。ぼくは考えたことがなかったので、よくわからない、と言いました。すると、まーちゃんは、夕日はすき?とまたぼくに聞きました。少し考えて、すき、と言うと、まーちゃんはとてもうれしそうな顔で、じゃあおんなじだね、と言いました。

 次の日、まーちゃんがひっこしたと、先生が朝のホームルームの時間に言いました。お父さんの仕事のかんけいだ、と言っていました。それっきり、まーちゃんには会えませんでした。教えてもらった電話ばんごうにはじめてかけてみたけど、げんざい使われておりません、と言う女の人の声が聞こえてくるだけでした。夕方、ぼくはポストのところに行きました。まーちゃんがすわっていて、こんにちは、と言ってくれるかもしれない、と思ったからです。でも、ポストの上にはだれも座っていなくて、はげたペンキの下から、さびがのぞいていただけでした。

 夕日が空をまっかにそめていました。ポストより赤く、まーちゃんのかみのけより赤く。まーちゃんは、ぼくに夕日がすきかとききました。あの時、ぼくはほんとは夕日なんてすきじゃなかったけど、すきだとウソをつきました。まーちゃんは、今もどこかで、ポストにすわって夕日を見ているのかもしれません。ぼくは、それをまねして、たばこ屋さんの横にあるポストの上にすわって、夕日を見ました。赤くそまった風の音が、こんにちは、と聞こえたような気がして、ぼくは、その時ちょっとだけ泣きました。

 ――――――――――――おわり
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