AnotherTime, AnotherPlace...
ToHeart2 AnotherDaysレビュー
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 以下の文章は、2008年3月7日、ToHeart2 AnotherDaysオールクリア直後に書いた「温もりの残り香」というAnotherDays感想の補足としてブログにアップしたものです。ブログ日 記と言うことで通常のレビュー文ではなく、神居鈴と白詰草の対談形式で進んでいる上、内容が個人の内的世界の補完を目的としたもののため、客観性を著しく 欠いていることは否めません。ただ、AnotherDaysに対する筆者の複雑な心情を説明するものとして、ここに載せておいた方が他レビューの理解の助 けになるだろうと思い、掲載しておきます。
 その点、ご理解いただきますよう、お願いします。

白詰草(以下:白):……………
神居鈴(以下:神):……………
白:……………
神:……不機嫌そうだね
白:そういうわけでもないのですが……。
神:気持ちはわかる。というか、前回書いたとおりだからね。
白:……ホントに覚悟はしていたんですけど。作品全体としてみても、一部を除けばだいたい予想通りというか、"こうなってもおかしくはない"という程度は思っていたわけです。しかし、実際にプレイしてみると、やはり鈍い痛みがじくじく続くような気分になりますね……。
神:まぁそうね。
白:でもまぁ、これはこれで、というような思いもあります。シナリオを個別に扱うのであれば、瑕疵は多いけど"達成"はしていると言えます でしょう。前作と比較してどうかと考えると疑問符が付くのは否めないですが、AnotherDays単体としては高いレベルでまとまっていると思う。作品 世界も、統一されたテーマに準じていますし、個別でバラバラという事もない。本編ではない郁乃シナリオや、前回さんざんに書いているこのみ&タマ姉シナリ オについても同様で、ある意思の配下で整然と並んでいます。
神:やけに好意的だね。
白:評価は客観的に、が基本です。そこでダダこねても仕方ないでしょう。
神:んじゃ、とりあえずAnotherDaysを総括してみようか。どうする? レビュー中心にするか雑談レベルか。
白:こんなところでまともにレビュー始めたら終わらないですよ。雑談レベルで充分です。
神:んじゃ、ぶっちゃけ誰が好きよ。
白:めちゃくちゃぶっちゃけですね。キャラとしてはシルファかなぁ。単純に可愛いじゃないですか。
神:口調が予想外だったね。
白:舌っ足らずで愛らしいです。子供っぽく反抗しているところもキュートだし。神居さんはどうですか。
神:春夏さんを別格とすると、郁乃になるね。深く考えているようで実は見当違いなところとか、見ていて飽きない。シルファと並んで、放っておけない子の双璧でしょ。
白:郁乃シルファは現在行われている公式の人気投票でも優勝争いですね。これからますます人気が出そうな。
神:んじゃ、キャラとは別にシナリオとしてはどうよ。誰のシナリオが好き?
白:これは難しい。客観的に見ればどれも同じレベルなので、甲乙付けがたいんですが……。うーん、これもシルファかなぁ。ラストのひと波乱がリズムを崩した感はありますが、テーマ的に見れば必要な部分ですし。よく練られているんじゃないでしょうか。神居さんは?
神:実はね、はるみシナリオがけっこう好きなの。
白:え、マジですか? こう言っちゃ何ですけど、ストレス溜まりませんかあのシナリオは。
神:あはは、気持ちはわかる。貴明の行動に、あまりにも無理がありすぎるしね。んなわけねーだろ、っていうツッコミを何度入れたことか。
白:じゃあなぜ?
神:あざとさがあんまりないじゃん。あのシナリオならもっとあざとく、ずるくラインを設定して、もっと綺麗にできるんだよ。貴明ももう ちょっとイイ男に描ける。でもそれをしていない。ほとんど馬鹿正直なまでに正面突破なの。よっぽど思い入れがあったんだろうなぁ。だからこそ、あのシナリ オには他を寄せ付けない、妙な迫力があるんだよね。すごくまっすぐで、力強いんだ。あれがいい。
白:はぁ……、なんとなく判るような判らんような感じです。
神:でもそうすると、ミルシルでツートップになるな。よっちゃるや、まー菜々とかはどう?
白:まーりゃん先輩シナリオは恐ろしく予想外の展開でしたね。
神:確かに(笑)。でも、あれだと前作のささらシナリオがなぁ。
白:というと?
神:ささらシナリオは、まーりゃん先輩が「ささらを完全には救えなかった」ことが肝だからね。きっかけを作り、固く閉じた扉をわずかに開い たけれど、心の奥底には到達できなかった。そこからの本当に難しい部分を引き継いだのが貴明でね。そしてまーりゃん先輩はじめ、その他キャラは彼らをなん とか幸せにしてあげようと、あがき苦しむ。選んだ方法が決して正しい道ではなくても、誰かを一途に思いやる心が最後の扉を開いた。右往左往しながらも、そ れでも心と心が通じ合い溶け合っていく様がテーマに直結するわけさ。つまり、「前の見えない道の中、誰もが悩み、苦しみ、過ちを犯しながら成長していく」 ことが作品の最重要点で、その前提の元ではまーりゃん先輩といえども万能の力は与えられない。それが、AnotherDaysではほとんど無敵の能力を手 に入れているわけだからね。ささらエンド後ではないはずなのにささらの心は開きまくってるし、あれあれ?ってなもんです。貴明いらねーじゃん。
白:そこら辺は、もともとの設定が「ToHeart2の"続きではない"」ということも含めて考えればいいのでは。登場キャラの組み合わせ を見れば一目瞭然で、菜々子とイルファとささらまーりゃんが並び立っている時点で、前作の引継ぎストーリーじゃない。AnotherDaysは「キャラク ターを引き継いだ」ことは間違いないにしても、世界体系自体は引き継いでいないと考えるのがベターだと思います。少なくとも本編に関しては間違いなくそう でしょう。
神:本編は確かにそうかもしれないね。何しろ、裏でゲーム作ってる現場まで見られるわけだし。
白:そして、これは前回でも言ったことですが、舞台が秋だというのが重要なんです。前作を完全に踏襲した「もしかしたら」の話であれば、秋 である必要がどこにもない。春で良いんです。あるいは夏でも。しかしそうではない。春でも夏でも冬でもなく、秋が舞台だと言うことには、かなり深い意味が あると私は考えます。
神:ほう。
白:ちょっと奇妙な言い方になりますが、秋は春の裏という考え方ができますでしょう。これを持ってきたのは、つまりAnotherDays は「B面」の役割を担っているんじゃなかろうかと、そう思うんです。共に宿りし物語ではあっても、相互は密接ではない。それが故に、世界設定が ToHeart2と完全一致しない。
神:B面か……
白:だからこれはやっぱり"Another"な物語なんですよ。もしもこうだったらの" if "ではなく、もう一つの日々という意味の"AnotherDays"。だからこそ、貴明は誰ともくっつかずに秋を迎えているんです。
神:誰ともくっつかず?
白:そう。それが最大の証拠ですよ。だって神居さんが貴明の立場だったとして、ToHeart2のヒロイン陣営を前に、誰ともくっつかずに誰も好きにならずにのほほんと春が過ぎて夏を越えて秋を迎えるなんて、考えられます?
神:無理。このみか草壁さんに撃沈するのが目に見えてる。
白:でしょ。Anotherなんですよ、だから。AnotherDaysの時間軸を遡っても、前作ToHeart2は出てこない。別物なんだから。
神:となると、アレだ。郁乃シナリオとこのみ&環シナリオが別枠扱いなのは必然と言うことになるな。あの2つは世界体系も前作からの続きで間違いないわけだから、本編中に入れると話がおかしくなる。
白:…………
神:…………気持ちはわかるけど、そこで黙られると困る。
白:せっかく「これはオリジナルとは関係ない同人ゲー」で通そうと思っているのに、そこで「続き」とか言われますとね……
神:いや、だって仮にそう考えるとしても、実際問題ストーリーは続き物だし、しょうがないじゃん。
白:そりゃまあそうですが。
神:でもあれどうなんだ。ホントに続きなのか? 気になったのはさ、このみシナリオの後日談の割には、環とゲンジ丸のエピソードや、膝枕エピソードがでてきてるでしょ。あれってこのみシナリオと並び立つの?
白:いちおう確認しました。並び立ちます。毎日がヘンな過ごし方になりますが、意図的に進めれば並び立ちます。
神:ああそうなんだ。じゃあこれはマジで前作引き継ぎね……。
白:……いや、まぁ、たとえ引き継いだ話であったとしても、あれはあれで独立した物語だと考えればアリなんですよ。誰も未来のことなんて判 らない。ひとつの分岐点で、仮に"そうであるべきでない"選択をしたとしても、結果としてそれが後の成功につながるなんてのはリアルでもザラにあります し。それに、2人とも幸せそうですし、まぁ良いんじゃないでしょうか。
神:無理してない?
白:別にそうでもないです。まだ少し整理する時間は欲しいですが、結局はこのみとタマ姉が幸せかどうかが重要なわけですから。それに対して外野がいちいち文句をつけてみても始まらない。
神:でも整理する時間は必要なのね。
白:そりゃあ、まぁ。感情先行で言えば……。いや、でも、まぁいいじゃないですか。その内です。いまは痛くても、その内です。
神:痛いんだ。
白:そのくらい許してください。
神:まぁ、ね。ましてや、このタマを最後に残していたわけだからなぁ。せめて郁乃シナリオを残しておけば、まだある程度は中和されたかもしれないんじゃない?
白:それもどうでしょうね。郁乃シナリオ自体はとても好きですが、さすがにダメージが大きすぎて中和しきれないような気はします。それよりは、春夏さんシナリオが無事だったということの方が慰めでしょうか。
神:あれはほっとしたね。
白:ですね。あれで不倫ドロドロ展開になっていたら、もう立ち直れません。
神:そうだね。でもだからこそ、少し中途半端な感じは受ける。
白:中途半端?
神:このタマであれをやったんなら、春夏さんでも旦那と分けっこしておかないと、バランスがおかしい。男1女2がOKで、女1男2はNGでは通らないでしょ。
白:いや、そんなの誰も望んでないでしょう。このみ&タマ姉の需要はハーレムウハウハでまだあるんでしょうけど、他の男が出てくるのはユーザーが拒否反応を起こします。
神:いまさら何を言ってんだ。君自身がこのタマに拒否反応起こしてるじゃないか。いずれ100%の支持なんてありえない。エロを加えた時点 で、誰かは「やめてくれ」って叫ぶんだよ、君のように。どうせやるなら毒食らわば皿までの精神でそこまで突っ切らないと、作品自体の説得力がゼロだ。そこ を「ここはやめとくか」なんて妥協するくらいだったら、最初から作るなという話になっちゃう。商業主義は重々承知するにしても、クリエイターの矜持くらい は守って欲しいね。やりようは他にいくらでもあったんだから、その道を選んだら最後まで走らなきゃ。
白:それはそうかもしれませんが、まず作品の方向性として違うでしょう。ぶっちゃけ、貴明というプレイヤーの分身が、かわいい女の子を選び たい放題、独占し放題できるから良いわけで、他の男と分け合いなんて、クリエイターの矜持云々の前に作品のカラーと相容れない。ToHeartシリーズの カラーとも違ってしまう。だから、そこを省くのはおかしくはないと思います。例えば郁乃シナリオでは、ルートによって郁乃が報われない性行為に至ることが ありますが、何らかの要因で相手がぜんぜん関係ない男になっていたら金返せコール出ますよ。雄二でもだめでしょう。貴明だからまだ許せるんです。あれはプ レイヤー自身なんですから。郁乃シナリオでは若干立場が違いますが、少なくともプレイヤー自身であったものには違いない。
神:なるほどね。じゃあ、このタマも納得済みなんだ? 良かったじゃん、最上級の美少女二人独占できて。しかも郁乃と違って、このタマは報われてる。貴明とラブラブの上、お互いが攻撃しあうことなく同じ男に甘えられるわけだから。カラーともぴったり合致するね。
白:それはまた話が別じゃないですか。このみ&タマ姉シナリオの問題は、「結論先送りの選択が結果的に最上の解答になってしまっている」こ とでしょう? この選択を認めてしまうと、前作トゥルーエンドで得た幸せはなんだったんだという話になる。あの時のこのみの笑顔に向かって「実はもっと幸 せになれたはずなんだよ」「おやおや、タマお姉ちゃんは仲間はずれなのかい?」って言えますか? 誰だって、あの時のこのみこそが、最高の幸せを約束され た少女なんだって思いたい。幸福に上も下もありはしないですが、だからこそ、人はいま歩んでいる人生が最高のものであるはずだって思いたいんです。それな のに、オフィシャルでそれを凌駕するものを出されたんじゃ、やりきれないですよ。何のために、彼女は大好きなお姉ちゃんを傷つけてまでも、貴明との恋を実 らせたのか。タマ姉にしたって同じこと。……お門違いは重々承知で言いますけど、2人が可哀想で仕方ないです、もう。
神:まぁそうだね。
白:というかね、そのくらい判ってるはずでしょう? それなのになぜ春夏さんがとか変なことを言い出すんですか。無闇にこっちの神経逆撫でないでくださいよ。
神:だって君さ、こっちからそのくらい言わないと、あのシナリオを何とか受け入れようとか考えちゃうでしょ。
白:え? それは……
神:実際、さっきのシナリオ批判は、水を向けなければ語らなかったでしょうが。ああだこうだと擁護に回ろうとしていたのをもう忘れたの?
白:…………
神:不機嫌なのはそのせいだよ。受け入れがたいものをわざわざ無理に受け入れようとするからストレスが溜まるのさ。イヤなものはイヤだ、こ んなの認めないって言えば良いのに、いちいち目の前に用意された物語を好きになろうとするから歪が生まれる。いいんだよ、その辺で愚痴吐いてればさ。どう せ君のことなんか誰一人気にしてないんだ。はばかることはない。ましてや、泡沫サイトの超個人ブログなんだし、感想が批判一辺倒でもかまやしないさ。その 上で、前作のこのみシナリオ、あるいは環シナリオをめいっぱい愛してあげれば良い。間違ってるとか正しいとか関係ない。あるべき姿も関係ない。
白:……ひどい言い草ですね。
神:まぁね。でも、多少気が楽になっただろう。
白:……それはまぁ、少し。ちょっとムカつきますが。
神:そりゃ失礼。
白:でも、確かに……、それで良いといえばそうですね……。
神:だろう?

白:それでも……、それでもね、私はこの世界を好きでありたいと思うんですよ。このみ&タマ姉シナリオも含めて、です。
神:どうしてさ。
白:だっ てToHeart2が優しさにあふれた物語であることを知っているから。だからAnotherDaysも優しさと、そして幸せにあふれていてほしいと思う んです。あの選択が導いた結末は、どちらも違う性質を持っていて、どちらも同じくらいに幸せであり、上下なんてないんだと。何物にも替えがたく、春の花束 に祝福された物語なのだと……、そう思いたいんです。そんな必要はどこにもない、それは偽善であり欺瞞であり傲慢なのだと判っていても、それでも……、そ う思うんです。





初出:2008年3月7日


(画像:(c)Leaf/AQUAPLUS 「ToHeart2 AnotherDays」)

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