日常の中のミステリー
人と人との触れ合いの中で、謎はひとつ、またひとつと解きほぐされる。
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タイトル 著者名 出版社
空飛ぶ馬 北村薫 東京創元社
六の宮の姫君 北村薫 東京創元社
邪馬台国はどこですか? 鯨統一郎 東京創元社
壺中の天国 倉知淳 角川書店
ささら さや 加納朋子 幻冬舎


NOW PRINTING 北村の代表シリーズ『円紫師匠と私』シリーズ第一作の短編集。北村作品を語る時に、よく引き合いに出される『砂糖合戦』も、この本に収録です。しかし、やはり白眉は表題作『空飛ぶ馬』でしょうか。人の持つ魅力が、この一作に描かれてます。人は決して優しいだけではない。されど、辛いだけでもない…。人と言う存在を平等に、冷静に、温かく見つめる北村薫の視線こそが、この作品を生み出し得たのでしょう。ちなみにこの作品、文庫を持っていたんですが、友人に貸したまま友人が行方不明になってしまったために、もう二度と返ってこないと思われます。また買うか…。


あらすじ:噺家の円紫師匠と喫茶店に来た私は、少し離れた席に座っている女の子達がおかしな事をしているのに気付いた。自分達のカップに砂糖を入れているのだが、その量が並外れて多いのだ。しかも、せっかくたくさん砂糖を入れているにも関わらず、紅茶に口をつける気配は微塵もない。向かいに座っている円紫さんにそのことを話すと、彼はすぐに何か閃いたらしいが…。(第2話:『砂糖合戦』)


その昔、筆者は本を読むたびに、感想を必ず文章に残していました。そのとき書いた文章を以下に。今でもその感想は変わってません。
…この作品を読まなかったら、私は読書というものの楽しさの、その10分の1すら知らずに、生涯を終えていたかもしれない。


あらすじ:卒業の年を迎えた主人公『私』は、卒論のテーマ『芥川龍之介』を研究していく傍ら、ある大御所作家から芥川の謎めいた言葉を聞く。短編『六の宮の姫君』に寄せた、著者である芥川の一言『あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ』……。この言葉の真意を求め、『私』は深い思索の海に、その身を委ねていく……。


誰も信用しない歴史解釈が力いっぱい展開されるケッ作本格歴史ミステリー。思わず「そうだったのか!」と言いそうになる場面も多々あるが、でもやっぱり「んなわけねぇよな」と思い直す。それの繰り返し。ミステリー的に歴史を読み解くとこうなります、というお手本のような作品集。あんまり頭を使いたくない時とか、難しい話に辟易したときにどうぞ。


あらすじ:このところバーテンダーの松永は忙しい。常連の三人がいきなり歴史検証バトルを始めてしまうので油断は禁物。話についていくため予習に励む一方、機を捉えて煽ることも。そつなく酒肴を供して商売も忘れず、苦し紛れのフォローを試み…。またもや宮田六郎の独壇場か?幕引きのカシスシャーベットがお出ましに。「九州? 畿内? そんなところにあるもんか!」。


騙し屋倉知渾身の剛速球。電波な人、オタクな人、マセた子供、普通の人、そんな人々が集まるとミステリーはこんな形になります。どこまでも日常、されど起こる事件は非日常、結末は日常か?非日常か? 真相は自分の目でお確かめください。そうそう、読む際は、倉知お得意の「仕掛け」にご注意を!



あらすじ:知子は1児の母である。そこに祖父を加えた3人で、慎ましやかに、平和に暮らしている。夫はいないけれど、毎日それなりに楽しく暮らしている。知子が住む稲岡市そのものも、おおむねそんな感じで、みんなほのぼの暮らしている…はずだった。ひとりの女子高生が、撲殺されるまでは…。平和なはずの地方都市に突如巻き起こった殺人鬼騒動。凶手の主は、ひとりでは飽きたらないのか、2人、3人と死体を積み上げていく。そして、事件発生後に必ず現れる、犯人の手によるものと思しき「電波怪文書」。奇怪な内容の、犯行声明ともとれる文書の意味するものはいったい? そして、一見無関係な被害者たちを結ぶ接点とは?


倉知と並んで、「なかなか新作が出ない作家」との誉れ高い加納朋子の傑作短編集。この表紙が、もう、イイんだ。読む前から泣ける。ちなみに加納朋子の作品は、総じて装丁がいいです。『沙羅は和子の名を呼ぶ(さらはわこのなをよぶ)』も、半透明の表紙がねぇ…。…もちろん、内容も抜群です。淡い色調の中で展開される物語は、思わずホロリとしてしまう場面がいくつも。読みすすめる内に、あなたはきっと思う。「サヤ、がんばれ」と。


あらすじ:突然の事故で夫を失ったサヤは、赤ん坊のユウスケと共に、佐々良という町に移住する。そして、そこで出会うさまざまな人たち――久代、夏、珠子のおばあちゃんトリオ、喫茶「佐々良」のマスター、エリカ&ダイヤ親子――。そして、サヤが困ったときに、他人の姿を借りてサヤを助けに来てくれる、今は亡き最愛の人。「私、知ってる。この眼を知ってるよ」。
 ……風に乗って、今はもういない大切な人の囁きが聞こえてくる――ささらさや――。
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