「ねぇねぇ、よっちとちゃるは、お風呂には何を入れる方?」
柚原家の脱衣場で友人2人にそう聞いているのが我らが柚原このみ嬢である。
白く清潔な下着姿も見目麗しく、いまは数種のバスクリンを並べて、湯船に何を入れようか迷っているようだ。
「あー、アタシはラベンダーのやつかなぁ」
そういってシャツのボタンを外しているのが、このみの友人よっちこと吉岡チエである。前ボタンをはだけると、齢不相応に育ったDカップが誇らしげに顔を覗かせる。
「家は湯の花が多いけど…」
よっちの隣で、スカートのファスナーを下ろしているメガネの子は、こちらもこのみの友人ちゃること山田ミチルである。
3人合わせて、や・ゆ・よ。
スカートがぱさっと落ちると、薄いピンクのショーツに包まれた綺麗なヒップライン。
「うーん、湯の花はないなぁ。ラベンダーもないけど、でもジャスミンならあるよ?」
友人二人は高校に入ってさらに女っぽさが増したようではあるが、我らがこのみ嬢はというといまだ中学生もかくやというようなボディラインをこれでもかというほど自己主張している。
つるぺたの胸と、ほっそりさんのウェスト、肉付きの薄い小さなヒップ。
中学生どころか、今時の小学生でももう少し成長しているかもしれない。どこにブラジャーの需要があるのか、かなりの疑問だ。
しかし、それが逆説的に、彼女のあどけない魅力を引き出しているのも厳然たる事実である。
「ん、じゃあそれで良いんじゃない?」
ライトグリーンのブラジャーを外しながらよっちがそう言う。
「わかった。ちゃるも良い?」
「ん」
「じゃあ、これ入れるね?」
とりあえずバスクリンを決めて、このみも下着を脱いで生まれたままの姿に。下着を脱ぐとよりいっそう幼児体型である。
既に裸になった友人2人と並ぶと、ほとんど姉妹のノリだ。もちろんこのみは末娘。
※
「よっちの胸、大きくて良いなぁ〜」
ツン、と生意気に上を向いた円錐型のおっぱいが湯船に浮かぶ様を見ながら、このみが心底うらやましそうに呟く。
柚原家のお風呂は広い。父親も母親も、とにかく風呂だけには並々ならぬこだわりがあるらしく、3人いちどに入っても、まだ脚を伸ばして余るほどなのだ。
「へっへ〜。これはアタシの自慢だもん。まぁ…さすがに姐さんにはかなわないけど、あれは反則だからなぁ」
「負けは負け」
横からちゃるが口を挟む。
「うっさいよ、ちゃる。Bカップのくせに」
「女はお尻のラインが命」
そう言って、ちゃるが背中を向けて、猫が伸びをする格好にも似たポーズをとる。いまはメガネを外した切れ長の目が色っぽく、同性のこのみから見てもドキッとする。
「へん、でも男が見るのはおっぱいだもんね。お尻ってわかりにくいし」
「ん。それはそうかもしれないが」
「2人ともいいなぁ〜…。私も、よっちやちゃるみたいになりたいよ」
アピールポイントの少ないこのみにとってみれば、おっぱいでもお尻でも、とにかく何か武器が欲しいところだ。
「このみ〜。このみはそれで良いんだって。そういうお子様なところがこのみの魅力なんだから」
「ん。私もそう思うぞ」
「あー、2人して子供って言ったー。それに、帰り道で私の胸大きくしてやるーって、いっぱい揉んでたのに」
夕方の出来事を思い出して、このみがぷぅっと頬を膨らませる。怒っているフリ…なのだが、どう見ても愛らしさが先にたつ。
「だぁって…ねぇ?」
「ん」
「む〜…。そんなこと言うんだったら、ほんとに子供になっちゃうんだからね?」
むくれたこのみが、妙なことを言い出す。
「は? どうやって?」
「ふふ〜。てりゃ!」
掛け声が早いか、突然このみがよっちに抱き着き、湯船の壁に友人を押し付けると、驚いて飛び出た左側のおっぱいの先に吸い付いた。
「なっ、ちょちょちょちょっと!?」
そのまま、ちゅうちゅうと友人の乳首を吸うこのみ。どうやら、赤ちゃんになったフリらしい。
「ん〜ふ〜。ん〜…ままー、おっぱい」
「だっ、誰がママか! って、ちょ…っと、待……っく。このみ、やめ…」
「おいしい〜」
無論、母乳が出ているわけはないのだが。
「楽しそうだな」
事態を見ていたちゃるが、よっちに声をかける。
「た、楽しいわけないっしょ…。ちょっと、助け…、は、く……この、この…み、やめ…」
必死で抵抗している…つもりなのだが、どうにも力が入らない。このみが入力する『何かの感覚』に身体がついていかないらしく、もじもじと脚をすり合わせたりするばかりである。
「私も吸って良いか?」
「あ、あほぅ!」
「…でも吸う」
「やーめーろー!」
抵抗むなしく、右の胸に吸い付かれるよっち。大きなお子さん二人を抱えて、しばらく若いママさんの苦悩が続いた。
「ぜーっ、ぜーっ…あんたら、アフォですか…」
「おいしかったー」
「ん、そうだな」
顔を見合わせて笑い合うこのみとちゃる。再度言うが、もちろん母乳は出ていない。
「ていうか…。私ばっかり、ちょっと不公平だよねぇ」
「え? なに?よっち」
すっかり硬く尖ってしまった乳首を手で隠しつつ、よっちがこのみたちに詰め寄る。正確には、ことの発端となったこのみに。
「あ、あの…どうしたの?よっち…」
「へっへっへ、お嬢さん、ただで帰れると思いなさんな」
「あー…。そろそろ、出ようか?」
「吸わせろー!」
「きゃあっ!?」
飛び掛られて、湯船の壁に押し付けられるこのみ。同時に、薄い胸の左側に生温かく柔らかい感触が吸い付いた。
「ひゃあ!」
「ちゅーちゅー、ままー、おっぱい」
「ま、ママじゃないよぉ」
「んーふー…」
ちゅうちゅうと、先ほど自分が友人に対して行った行為を受けるこのみ。
「あ…」
不意に、このみの胸から首筋にかけて、何かの『感覚』が走る。
それが何なのかはわからなかったが、それでも漠とした何かがそこにある。
「や、やめ…よっち、だめ…」
「んー? んー…」
ちゅっちゅっと、吸ったり、舐めたり、転がしたり。赤ちゃんというよりは、よっちの気分はすっかりエロオヤジのそれであるが、このみにとってはどちらでも大差はない。
湯船で桜色に染まっていた肌は更にその赤みを増して、頭に巻いたタオルからこぼれた髪の毛がうなじを飾っている。
「だ、ダメ、だめ、ダメなの…ダメ…」
次第に声に甘ったるい響きが混ざる。小さい分だけ敏感なおっぱいから全身に送られる何かの『感覚』が、心と身体を支配していく。
「よっち、ずるい。私も」
そこに、さらなる赤ちゃん登場。このみの懊悩などつゆしらないちゃるである。おもむろにこのみの右胸に吸い付いて、こちらも負けじとちゅーちゅーと。
「やめ、やめて…ダメだよ、だ………あっ…?…ふ……」
ちゅうちゅうという音と、切ないほど高鳴ったこのみの鼓動と声が、しばらく柚原家のバスルームに響く。
――と
「ちょっと、このみ? あんまり湯船で騒ぐと危ないわよ?」
ガラッ
先ほどの攻防で立てた、じゃばじゃばという水の弾ける音を聞きつけた春夏が、何とはなしにお風呂の扉を開ける。
…悪気はなかったのだ。そんな光景など知るはずもないのだから。
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
4人分の沈黙。全員、扉が開いた瞬間そのままの格好で立ちすくむ。
「ご……」
春夏の声。とりあえず、よくわからないから、この場は放っておこう…とでも考えたのだろうか。
「ごゆっくり……」
「ち………ちがうのーーーーっ!」
このみの泣き声交じりの絶叫が、柚原家に響く。
夜はまだまだ、始まったばかりである。
――――――――――――つづく
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