ある日、警視庁捜査課に、稀代の怪盗マッド・クレイ1世から犯罪予告状が届いた。
『明日24時、国立美術館のメインアートを頂きに参上する。マッド・クレイ1世』
これまでマッド・クレイ1世は犯罪予告を100%完遂してきた。一度として実行されなかったことはない。
そして、現在、東京都の国立西洋美術館では、ルノワールの展示が行われている。警視庁は至急、上野の国立西洋美術館、および、念のために全国の国立美術館に捜査員を派遣するよう、関係各署に通達を出した。数時間後には、国内にある国立美術館すべてに、選りすぐりのエリート捜査官が終結するまでになった。
しかし…
どういうわけか、マッド・クレイは予告時間になっても捜査官たちの前に現れず、ただいたずらに時間が過ぎていくばかりで、ついに夜が明けてしまった。
「あのクレイが予告を違えるなんて…」
その日の午後、美術館側と会議を開いていた警視庁きっての敏腕・出井警視の携帯電話の着信音が鳴った。
「はい、出井ですが…」
「やぁ、出井君、久しぶりだね。元気にしていたかい?」
「っ! その声…貴様、マッド・クレイか!」
「うれしいね、ちゃんと僕の声を覚えていてくれたようだ」
「軽口はいい。それより貴様、あの予告状はなんだ。俺たちをからかってそんなに面白いのか!」
「おやおや、からかったつもりなどないよ。いったい何をそんなに怒っているんだい?」
「何って」
「それより、ターゲットはすでに頂戴したからね。せっかく予告してあげたのに、もうちょっと手こずらせてくれなくちゃ張り合いがないよ。次から気をつけてくれたまえ」
「あ、何? 今なんと言った」
「ターゲットは頂戴した、と言ったのさ。予告通り24時にね。ふふふ…どうやらまだ事態が飲み込めていないようだね。長年の付き合いだ、直々に教えてあげるよ。通話料金がもったいないから、端折るがね…」
そして、数十秒後、やり取りを終えた出井警視は膝をがっくりと折り、痛恨という文字が浮かんで見えそうなため息をついた。
「やられた! そういうことだったのか…。くそっ! またしても、奴にしてやられた…!」
なんと、かの怪盗は、並居る捜査官たちをあざ笑うかのように、予告を完遂していたのだ。
はたして、怪盗マッド・クレイ1世はいかにして、日本警察の誇る超エリートたちの目をかいくぐったのか?
ヒント:解答(模範解答)は、1行で書けるほど単純です。
――――――――――――解答はこちら
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